「開講の言葉」久谷雉

この投稿欄が「教室」と銘打たれているのは実に示唆的だ。「教室」とは、生まれてはじめて制度の糸に対する躓きを体感する人間たちの集う場である。「詩」という冠がついたところでそれは変わるまい。制度の糸が一条も渡されぬ真空な場など、この世のどこにあろう。言葉がもしも自由というものを持つとするならば、そのような場を作る自由ではない。むしろ、言葉が有限でしかないことを受容する自由である。受容には時に、抵抗以上の痛みが伴う。そして、私が読みたいのは、その屈辱と甘美とを封じ込められた言葉だ。いかなる道を経ようとも、言葉は最終的に制度への奉仕者、あるいは制度そのものとなる他ない運命にある。だが、それらと化した言葉のまなざすものは果たして虚空なのであろうか。その通りだ。しかし、眼前の虚空の背景に、あり得たかも知れぬ別の虚空の輪郭を夢見る、そんな自由の輝きも同時に存在するはずだ。

◯次回投稿規定

・宛先 mpwebclass@gmail.com(テキストファイルまたはワードの形式でお送りください。)

・締切り 11月30日

・投稿作品数 1人1篇

・商業誌からの依頼原稿(詩関連)のご執筆経験のない方に限ります。

・未発表作品に限ります。

講師:久谷雉(くたにきじ)1984年生まれ、埼玉県深谷市に生まれる。

「詩の雑誌midnight press」の「詩の教室 高校生クラス」投稿 を経て、 2003年、第一詩集『昼も夜も』をミッドナイト・プレスから出版。 2004年、第九回中原中也賞受賞。『ふたつの祝婚歌のあいだに書いた二十四の詩』(思潮社、2007)、『影法師』(ミッドナイト・プレス、2015)

小林レントさん講師による過去の講評。

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