反社会的性欲の排除に関する覚書

 

 

「結婚は人生の墓場って言うだろう?墓場は神聖な場所なんだよ。

 先祖たちが静かに眠っているわけだからね。自分自身のルーツもそこにあるわけだ。

 そんな神聖な場所に、性欲なんて持ち込めないだろう?」

 

斬新な言い訳しますね、と私は言った。

 

「よく、不倫男の言い訳で『愛しているのは君なんだ』っていうのがあるだろう?

 あれは決して嘘ではなく、一種の真実なんだよ。愛と結婚は結びつかないんだ。

 結婚は暮らしであり、日常だからね」

 

そうですか、と私は言った。

 

「常識にとらわれない事だね。一夫多妻制の国では、我々の常識は通用しないだろう?

 常識なんて、その程度のものだと知っておくことだ。

 国を越えただけで変わるようなものは、真の正しさとは言えない。

 国とはなんだ?一人ひとりの人間の集まりだ。」

 

いったい何を言っているんですか、と私は言った。

 

「どうだい、これから食事でも?」

 

行きません、と私は言った。

 

添ゆたか(そえゆたか)1989年生まれ。好きな洗剤はアリエール

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