AMEDAMA

 

「飴玉を舐めるのが異常に早い私の唾液には毒がふくまれていて、

キスをしたあなたはきっと死んでしまうわ」

 

それは楽しみだ、と、私たちはふざけ合った。

 

そうだね、君の体は毒のようだ。貪れば貪るほど欲しくなる、違法な麻薬。

そういうと、嬉しそうに笑った。

 

心を欲しがらない、珍しい女だった。

「セックスがゴールなの」と、少し申し訳なさそうに言った。

付き合う、とか、結婚、とか、考えたこともない、と。

それを好ましく思う私は、浅はかな男だろうか。

 

唾液がいつも砂糖の甘い味がした。

何か食べているの?と聞いたら、ヴェルタースオリジナル、と言って、

1粒の飴をくれた。

恐ろしく甘ったるいバターの味がした。

 

「セックスとお菓子と、服と化粧品。あと、漫画」

それだけしか興味がないの。

字面にすると、ただの馬鹿な女だが、

色々あった上での結論だろうと思わせる、何かがあった。

「考えすぎだ」と、愉快そうに、少し吐き捨てるように、女は笑った。

 

俺は死ぬのか?

「ええ、きっと」

 

あいかわらず甘い唾液のキスをしながら、

死んでもかまわない、と思った。

人間はいつか必ず死ぬことを、都合よく忘れて。

 

人間はいつか必ず死ぬことを、言い訳にして。

 

ああ、体が痺れて動かなくなってきた。

添ゆたか(そえゆたか)1989年生まれ。好きな洗剤はアリエール

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