2008年03月24日
時は逝く 北原白秋
時は逝く。赤き蒸気の船腹(ふなばら)の過ぎゆくごとく、
穀倉(こくぐら)の夕日のほめき、
黒猫の美しき耳鳴(みみなり)のごと、
時は逝く。何時しらず、柔かに陰影(かげ)してぞゆく。
時は逝く。赤き蒸気の船腹の過ぎゆくごとく。
北原白秋(明治18年/1885年―昭和17年/1942年)を読んでいて、いまも惹かれるのは、『思ひ出』の序文「わが生ひたち」であり、そこに収められたいくつかの詩である。序文「わが生ひたち」は、いまなお、読む者を遠いところに運ぶけれども、それは「ここ過ぎて……」というようなところではない、もっと絶対的に遠いところではないだろうか。「邪宗門秘曲」に、その遠いところはないが、「城ヶ島の雨」に、ふと、その遠いところを見出すときもある。(文責・岡田)
穀倉(こくぐら)の夕日のほめき、
黒猫の美しき耳鳴(みみなり)のごと、
時は逝く。何時しらず、柔かに陰影(かげ)してぞゆく。
時は逝く。赤き蒸気の船腹の過ぎゆくごとく。
北原白秋(明治18年/1885年―昭和17年/1942年)を読んでいて、いまも惹かれるのは、『思ひ出』の序文「わが生ひたち」であり、そこに収められたいくつかの詩である。序文「わが生ひたち」は、いまなお、読む者を遠いところに運ぶけれども、それは「ここ過ぎて……」というようなところではない、もっと絶対的に遠いところではないだろうか。「邪宗門秘曲」に、その遠いところはないが、「城ヶ島の雨」に、ふと、その遠いところを見出すときもある。(文責・岡田)
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