ビッグ・エックス
須永紀子
体育のない日にも
校庭には問題のある生徒がいて
ひとりで地球ジムにのぼっている
みんなが名前を知っていて
どんな先生も教室に連れ戻すことはできない
それがわたしだ
トラック五周の罰
悪いことなんか考える暇はないだろうと
先生は思っている
でもそれは正しくない
わたしはもっと先生を好きでなくなり
敵のようなものだと思うようになり
やっつけなくてはならないと思いこむ
使用禁止のシャープペンシルをにぎりしめ
変身する
給食のミルクがすごい勢いで体をめぐり
わたしは強い筋肉を持った
学校でいちばん速く走る女の子になる
五周では止まらない
正門を出て町を抜け
線路を越え
クラスの誰も見たことのない
超悪の軍団をさがしにいくのだ
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