雲がおりてきたら
(くもがおりてきたら)
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著者 山田正之(やまだ まさゆき)
装丁・写真 野口賢一郎
発行 2000年9月19日
定価  
本体1500円+税
ISBN 4-7952-0998-7 C0392 \1500E
判型 A5変形判 / 94頁
[収録詩篇]
雲がおりてきたら 島田駅 あと6日 X Japanの聴きかた あなたに会いたい 自立という自己実現 帰りの道 感性は進化する 視えない闇 鎌田君 絞りだす 自分の存在をたしかめるのは いまの仕事 ようちゃん チョコミント アイスキャンディを食べていた 雨の日が好き なっちゃん ―幸せを感じる時― つかのま 孤独の癒しかた 心が抜けちゃった  まあるいお月様 待ち人 易断所 ざわめき グッド・バイ 手のひらに伝わる 二人に伝えておきたい 幼い日を巡る なっちゃんへ 映画「転校生」のラストシーン そのあとに始まるものがある 僕らの原像 人を許せる時 凍りの塊となって 死は遠い昔へもどること?  いっせんぼく

[帯より]
日々、 新しい、 ほんとう。
インターネット上で書き続けてきた「ほんとうのことのーと」を一冊のかたちに。「寂しさと正直に向かい合うこと。それには自分を素直に表現する手段を手にいれる」のがいい。批評精神を手放さず、自らと対峙する作品集。



雲がおりてきたら
山田正之

青春真っ只の中、「あなたは胸にぽっかり穴の空いたことはありませんか」と学校新聞のコラムに書いた憧れのマドンナから「お友達でいましょう」との返事に、儚い恋 も夢と消え、松原俊彦君の3畳の部屋で、石井護君の作った曲を歌っていた季節。
そのひとつに「雲がおりてきたら」があった。

雲がおりてきたら
わたしはそれにつつまれて
静かに静かに目をとじるでしょう
雲にのった私は
小さな街をみおろして
そっと涙をながすでしょう
青空に浮かぶ私には
握っていたい宝石や残したいことばも
小さな街の小さな恋の
小さなハートの小さな涙

「雲」や「小さな」や「涙」やそれを運ぶメロディには、甘さと、切なさと、愛しさ と、ほろ苦さが含まれている。何事にも胸の躍動とその裏側にあった不安が混在していた季節だった。

この曲を作った護は、もう、この世にいない。30を前に長野の山の中腹で命を断った。事故死だったのか自殺だったのか、はっきりとはしていない。
残された僕らは、いまだに「雲がおりてきたら」を生き続けている。