[収録詩篇] 少年ケニヤ かきまぜられた場所 その朝 秋のちから 夫の記憶 約束 最後の記憶 早春の風 骨をまく夜 美しい週末 森の長い足 西日のあたる部屋 ザクロ 生きる力 そして今も 街への手紙 初出一覧 あとがき
[帯文章] 求愛のようなことばひとつで住み着いてしまった「あなた」を「まもる」、あるいは「まもられる」わたくしーー。わたくしの夢の続きを生きつづけて、「言葉たち」「愛たち」が十六篇の作品になった。澄みわたる須永紀子の詩境ーー。
それはいつも 未来から戻ってきたようにドアを開けた 鼻梁をつんとさせる大気がなだれこみ 窓の灯りを温かく 南瓜や芋を大きくした わたしが見あげる前に イチョウはレモン色になり 野の草は実を結んだ きみをまもるために、とは言わないけれど わたしを脅かさないように ゆっくりと少しずつ とても深いところから ひきかえしてきたのだ