約束
井上弘治
この坂を登って
あなたの髪に白鳥が飛び立つ
そんな幻を見るほど
散文的な気分ではなく
追いすがる記憶に追われ
降りしきる花雨に追われ
ふり払い
ふり向く
そんなあなたの輝く春の髪を
遅すぎた指さきで繰り返し梳く
感触のない夢の切れ端が
記憶の指さきにからみ
ふり払い
ふり向く
そこにない坂
そこにない思い出から降りしきる
花びらからも遠く離れ
古典のように生きる生活
(もういちど生まれてきたら
(もういちど逢いましょう
なぜそんな約束だけが
不意に訪れるのか……
神と坂と青空のすき間
降りしきる記憶
花びら
(もういちど生まれてきたら
(もういちど逢いましょう
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