『約束』
(やくそく)
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著者 井上弘治(いのうえ こうじ)
装丁 山下桃子
発行 2002年8月10日
定価  
本体2000円+税
ISBN 4-434-02313-6 C0092 \2000E
判型 A5変型判 / 84頁  仮フランス装 糸かがり

[収録詩篇]
・神話の過ち その夏  失恋 憶測する家族 哲学者は雨に打たれていた 恋のはじめ 
子どもたちが危ない  宇宙の均衡と故郷  約束  
・雨が降る、二人  交差点 ここに居てほしい  あらゆる地上のブルー  いつかそこへ  椿事 霧雨 

[帯文章]
さよなら、さよならと、降りつづく霧雨 きみ(わたし)は どれほどの 約束を 反故にして きたのだろう 「約束」を めぐる 罪深き 物語の数々



約束
井上弘治

この坂を登って
あなたの髪に白鳥が飛び立つ
そんな幻を見るほど
散文的な気分ではなく
追いすがる記憶に追われ
降りしきる花雨に追われ
ふり払い
ふり向く
そんなあなたの輝く春の髪を
遅すぎた指さきで繰り返し梳く
感触のない夢の切れ端が
記憶の指さきにからみ
ふり払い
ふり向く
そこにない坂
そこにない思い出から降りしきる
花びらからも遠く離れ
古典のように生きる生活
(もういちど生まれてきたら
(もういちど逢いましょう
なぜそんな約束だけが
不意に訪れるのか……
神と坂と青空のすき間
降りしきる記憶
花びら
(もういちど生まれてきたら
(もういちど逢いましょう