最期の言葉 佐々木浩
地球が滅びかけて
未知なる世界へ向けて
人類が最期に叫ぶべき言葉は
LOVE これ以上はないだろう
僕が死にかけて
僕が最期に語るべき言葉は
僕が愛した美しい詩の言葉などではなく
ある女性の名前だ これ以外はありえないだろう
名前 舞出晋一
僕が初めて下の名前で
君を呼んだ時
ちゃんをつけろよ
とは言ってくれず
口をふさがれた事を思い出す
それから歳月と同じくらい
互いに年を取れるようになった頃
久し振りに君を名前で呼んでみたら
もうキスはしてくれず
ちゃんをつけろよ
やっと口にしてくれた
欲しい言葉を手にいれた時は
もう、もう、
と、牛のように
欲しくて躍起になってた頃は
あい、あい、
と、猿のように
これらのたった二つ以外の
感情を生じさせる為に
今頃になって僕は
自分の名前を呼んでもらう事を
思いついた
よお、よお、よお、
と。
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