沈黙を破って、松下育男の十五年ぶりの詩集『きみがわらっている』が刊行された。読者は、ここに、詩と沈黙の弁証法を超えて、「愛の言葉/言葉の愛」を見出すに違いない。
【帯文章】
松下育男が帰ってきた。
そのことが、まず何よりも嬉しい。「あいつ、どうしてるかな」。なんて思うことにも寂しくて良い味はあるけれど、やっぱりこうやって一緒に過ごす一刻の味は格別だ。
帰ってきた人が、いま問わず語りにぽつりぽつりと話しはじめた。あいかわらずの優しいまなざしで、しかし、全力で正確に言葉を選んで……。その繊細な逞しさが、そのまま帰ってきた理由を告げている。芳醇な味だ。 (清水哲男
)
|