ISBN978-4-434-10400-8 C0092
【HP新刊紹介】より 「川田絢音さんの新詩集『それは 消える字』が刊行されました。 これは「詩の雑誌midnight press」に連載された詩篇を中心に編まれたものです。1969年の『空の時間』以来、独自の道を歩んできた詩人・川田絢音のことばは、いよいよ深みを増して、読む者をして、「詩とはなにか」、あらためて考えさせる力を秘めています。ここには「詩」がある。ただそれを知るばかりです。
カサブランカ カサブランカ というファックス屋で いま送ったのが詩というと 店のモロッコ人の眼がおののいて光った 詩の影を見て 人の思いが圧縮される 夏の列車で国を脱出してきたばかりの人に 詩を書いていると告げた時 こわばった頬がゆるみ 重い口で 詩はアルバニア語でもpoeziaと教えられた 詩と言うだけで 激情のように なにかを破る 読まれていないのに 詩が 伝わることがあって 手に入れることのできない現実のものを 獲たような思いがした