詩の雑誌 midnightpress21

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2003年秋21号(2003年9月5日発売)

【主な内容 】
●詩作品 高橋睦郎 小長谷清実 川崎洋 大石健 井上摩耶 萩原健次郎 岩木誠一郎  ●連載詩 三上寛 元山舞
●新連載 白紵歌 飯島耕一
●詩人・画家 西脇順三郎 新倉俊一
●『祝魂歌』を読む 立松和平 林あまり
●連載 詩想の泉を求めて/花筏は心のなかを流れる2 井上輝夫
●連載対談17  歌学の力 2 谷川俊太郎+正津勉 ゲスト/鶴見俊輔
●poetic dialogue 詩の危機 生の危機 瀬尾育生×稲川方人
●平居謙の「ごきげんPOEMに会いたい」 ステージ2  獅子舞詩人は刺激的! 矢板進の巻 
●素顔の金子光晴10 戦時中の金子光晴、そしてもう一つの戦時中。/松本亮●詩の教室 高校生クラス 清水哲男 一般クラス 川崎洋
●その他の執筆者  大澤恒保  長谷邦夫 高取英 ハルノ宵子 松岡祥男  根石吉久 大家正志 須永紀子 田原  

 
■表紙タイトル文字/谷川俊太郎
■表紙「眠る魚」・目次・本文イラスト/永畑風人
■写真 野口賢一郎


「詩の雑誌midnightpress」21号をお届けします。今号から表紙を少し変えることにした。タイトル文字は谷川俊太郎氏に揮毫していただいたものである。永畑風人氏の版画も味わい深く、スターティング・オーヴァーとしたい。■某日、歌人の三枝昴之氏が、ある座談会(「詩と思想」8月号)で、「日本の詩人はオリジナル100%の作品を作ろう作ろうと思い過ぎたんだと思う」と発言しているのを目にして、思わずウームと考えさせられた。ひとつには、三枝昴之氏が、あるポイントを的確に衝いていたからであるが、同時に、日頃から直面している課題にあらためて向かい合わせられたからでもある。■「オリジナル100%」、あるいは「新しさ」への強迫は、現代詩の宿痾、というか宿命のようなものであり、その宿命とどう向かい合うか問われているのが、いまの詩人ではないだろうか。強迫を超越への欲望といいかえてみよう。すると、その困難さはよりはっきりと見えてくるが、同時に、意匠としての「オリジナル100%」や「新しさ」がもはや無効であることも明らかにされる。この世界(日常)を生きつつ、この世界を超えようとする心性(精神)は、その程度はどうあれ、消失することはないだろう。だが、そうであればこそ、生のもろさもまたある。試行錯誤の実践を通してしか、なにごともなしえない、前に進むことができないと実感されるばかりである。そして、たどりついた言葉こそが、真に新しく、かつ豊かなものとなるだろう。■前号に続いて、鶴見俊輔氏をゲストに迎えての「歌学の力 Part2」をお楽しみください。今号から、飯島耕一氏の小説が連載されることになった。井坂洋子氏の連載は著者の都合で休載。■前号で小詩集を組んだ田中エリスさんの詩集『かわいいホロコースト』、そして井上摩耶さんの『Look at me──たとえばな話』がまもなく刊行される。遅れていた辻征夫氏の『詩の話をしよう』もまた。(お)




伽耶琴 
      サゲ
カヤグム・アンサンブルの四界の四人に

 高橋睦郎 

 

           
   
                                           萓草の伽耶の夏空いかならん

耳にたぐいなく うつくしい
音があるとしたら KATA
こころの萱草を押し分け 一日歩くと
とつぜん 日の暮れの まぶしい海
落日の金にまみれた うねりの はるか
見えない しかし 繁吹打つ 確かな陸
その先にも 何処までも そよぐ萱原
その果ての 朝の空に 鳴りつづける 琴
そのひびき かやかやと
かやかやと かやぐむ四つ