誌の雑誌 midnightpress 24
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友部正人「アクシデンタルツーリスト」
吉原幸子「愛」

 

2004年夏 24号(2004年6月5日発売)

【主な内容 】
●第九回中原中也賞受賞詩人 久谷雉 新作二篇
●詩作品 川田絢音 宋敏鎬 飯田保文 槇さわ子 松元泰介 有働薫●連載詩 三上寛 元山舞●長篇詩/和合亮一
●採録シナリオ 稲川方人監督作品『たった8秒のこの世に、花を──画家・福山知佐子の世界』
●critic 2004  キワモノ/石田瑞穂
●連載対談20  from "no media " to"no media" 谷川俊太郎+正津勉 ゲスト/友部正人
●poetic dialogue 文学とは何か 瀬尾育生×稲川方人
●平居謙の「ごきげんPOEMに会いたい」 ステージ2  立原道造から始まった 中村剛彦の巻 
●詩の教室 高校生クラス 清水哲男 一般クラス 川崎洋
●連載など執筆者  大澤恒保  長谷邦夫 高取英 ハルノ宵子 松岡祥男  根石吉久 八木幹夫  井坂洋子 井上輝夫 飯島耕一 田中エリス 井坂洋子 松下育男
 
■表紙タイトル文字/谷川俊太郎
■表紙「パスカルのゴーシュ」・目次・本文イラスト/永畑風人
■写真 野口賢一郎


今号は、小誌の「詩の教室」高校生クラスからデビュー、このたび詩集『昼も夜も』で第九回中原中也賞を受賞した久谷雉氏の新作二篇を巻頭に置いた。受賞を契機に、さらに飛躍せんとする詩の言葉が生成しているさまがみてとれるように思う。■また、今号では同じく中也賞(第四回)を受賞した和合亮一氏の長篇詩を掲載した。「詩の現在」と真正面から向かい合った力作である。■ここでいう「詩の現在」とは、ひとつには、いま詩を書く者ひとりひとりがそれぞれ正対している「詩の現在」をいう。これは詩を書く者の数だけある「詩の現在」といってよいだろう。一方で、これらそれぞれの「詩の現在」が集まり、重なり、構成される、いわば全体としての「詩の現在」というものがある。和合氏の長篇詩は、その個としての「詩の現在」と全体としての「詩の現在」との往還が構造化されているところがアクチュアルだ。■友部正人氏をゲストに迎えた、谷川・正津両氏の連載対談では、詩の朗読について具体的かつ実践的に話し合われている。今回の鼎談では、基本に返って、詩の朗読について、そして詩について、考えさせられた。なお、記事中に紹介されている友部正人、吉原幸子両氏の朗読を小社のホームページで聴くことができます。転載を快諾していただいた友部正人、吉原純両氏の御厚意に御礼申し上げます。■瀬尾・稲川両氏の対談は、いつも、いま何が問われているかを考えさせられるものだが、今回もまた詩について、文学について、アクチュアルに語り合われた。その稲川氏が監督した映画『たった8秒のこの世に、花を』の採録シナリオを掲載したので、併せてお読みいただきたい。なお、小誌では、この映画の上映会を考えている。詳細は次号で紹介します。■今号は増ページとなり、本体価格を1200円とさせていただいた(定期購読者の方々は従来どおり)。進行もタイトだったが、明日、印刷所に入稿できるという段になって、この後記を書いている。小誌の編集発行とは、いってみれば、自分のなかにある詩の解体と再生を同時に生きるということだろう。なお詩へとなぎとめるものがある限り。(岡田)


詩作品のなかから

道をたずねたら       
川田絢音

道をたずねたら
聴こえない
と砂糖黍を売る男が
おおきく上体を揺すった
何処かへ行こうとして 道を訊くなどそらぞらしい
恥ずかしい思いをして
あたまから破れ
眼もやっと脱けていくようだ
じっと動かない高層建築もそこにあるまま
海辺のさびしい湿原である
皮をRかれた砂糖黍の茎が
リヤカーの上で
あと先のない白さを明滅している
蜻蛉をまね
灰をまねて漂うばかりである