〈相談例〉どうすれば自分だけのスタイルをみつけることができるでしょうか
- 詩を書きはじめたばかりの高校生です。
僕は立原道造の詩をすきになってから、詩を書きはじめたのですが、どうも無意識のうちに彼のことばのマネをしてしまいがちになります・・・・・・とても道造にはおよばないしろものですが。どうすれば自分だけのスタイルをみつけることができるでしょうか、教えてください。
「自分だけのスタイル」・・・・・・非常にややこしいことばですね。あるひとりの人間が書いた詩のなかに、たった1パーセントだけでも、彼あるいは彼女じしんの純粋な発想がはいっているというのはとても大変で尊いことなのです。残りの99パーセントが先人のマネだったとしても、それを基盤にして1パーセントの新しいものを生むということじたいが、大切な仕事なのです。ささやかな割合の発想がたくさんあつまることで、ゆっくりとことばの歴史は進んでゆく。ときどき70パーセントから100パーセント、オリジナルなものだけで作品をつくりあげてしまうような才能の持ち主もあらわれることはあるのですが、しかしそれだけでは充分ではないのです。
さて質問の答えですが、積極的に立原道造のマネをすることをお勧めします。もしも現代に道造が生きていたら書いていたであろう詩を書くつもりで、どうか徹底してやってみてください。
人間はロボットではないので100パーセント、他人のものをコピーするなんて、まず不可能だとおもっていい(出来たら出来たでそれは一つの貴重な才能です!現代詩でパスティーシュを売りにしてる人ってほとんどいませんから)。かならず、「未熟さ」とか「力量不足」などという問題に回収しきれない、ささやかな『ズレ』があなたと道造の作品のあいだに生まれてくるはずです。また、それを把握できるまなざし(感性や知恵とか言い換えてもいいかな)を手に入れた瞬間から、あなたの「詩人」としてのほんとうの苦闘がはじまることでしょう。どうかご健闘お祈りします!